このテーマで、シャミナード師の宣教活動の「基本原則」について考えてみましょう。

これまで繰り返し述べてきたように、シャミナード師の基本的な考えは「革命によって混乱したフランスの教会を再建する」ということでした。

その手段として、「信仰に基づく信徒共同体」の育成に努めました。その「信仰の共同体」に人々を招き、そこでの信仰の分かち合いと活動を通してキリスト者として成長し、共同体として信仰を生きているその姿が周りの人々に感銘を与え、そのことが結果的に教会の再建へと結びついていきました。それで、「シャミナード師とその弟子たちの最も基本的な活動は、信仰の共同体を創りそこに人々を招くことだった。」といえます。

時が経つにつれて、この信仰共同体が独自に活動をするとき、シャミナード師は二つの基本原則を掲げました。

第一は活動の“普遍性”、第二は“時のしるし”を見分けること、でした。

第一の「活動の普遍性」とは、「キリストを人々にもたらす(福音宣教)ためにあらゆることをする」という意味ではなく、「福音宣教のための活動を、前以って何も排除しない、何に対しても可能性を閉ざさない」という意味です。人間は時間、能力、人的・物的資源など限られているので、福音宣教にとって価値あるものを何でもすることはできません。

そこで、第二の「時のしるしを見分ける」という原則が大切になります。“今という時代に、この場所で神はどのような活動を私たちに望んでおられるのか”を見分けることです。シャミナード師は「時代の精神とその必要性に応える」という表現を使っています。

「時のしるし」をどのようにして見分けるのでしょうか。

基本的には、「その時代、その地域の人々が必要としていること」に“時のしるし”を読むことができます。シャミナード師にとって、革命後の混乱したフランスの社会と教会が必要としていることは、初代教会のような「福音に基づいた真の信仰共同体」を創ることでした。現代のように世界が一体化してくると、教会は、地域ごとに違いはありますが、世界全体にとって緊急で、大切なことを繰り返し指摘します。ここに“時のしるし”をみることができます。

以上の原則を今の私たちの世界に当てはめると、どんなことが言えるでしょうか。

このグローバル化した世界には、様々な問題が溢れています。貧富の格差の問題、正義と平和の問題、民族と宗教の問題、情報化社会の問題、文化・教育の問題など、いくらでも挙げることができます。ただ、教会は、福音を現代の人々に宣べ伝える上で、世界の貧しさの問題、貧富の格差の問題を特に大切な“時のしるし”と考えています。21世紀に入った日本で生活している私たちにとって、「貧しさの問題」はどのように見えているでしょうか。或いは、私たちにとって“時のしるし”と見えるものは、他にどんなものがあるでしょうか。マリアニストとして何か活動しようとする時、具体的にどんなことができるでしょうか。